日本の伝統的工芸品に指定されている陶磁器の産地は、全国に32箇所もあります。日本は、世界に類を見ない陶磁器の宝庫ともいえる国です。この記事では、各地域が誇る独自の技法とデザインを持つ陶磁器を紹介します。美しい陶磁器は料理を一層引き立て、食卓に特別な雰囲気をもたらします。日本の伝統と現代のニーズを融合させた陶磁器の魅力を、ぜひご覧ください。
東北地方
大堀相馬燒(おおぼりそうまやき)
福島
大堀相馬燒は、福島県で生まれた陶磁器です。青ひびと呼ばれる貫入(かんにゅう)の地模様に、旧相馬藩(きゅうそうまはん)の御神馬(ごしんば)が走る姿を描く「走り駒(はしりごま)」の鉄絵が特徴です。
会津本郷焼(あいづほんごうやき)
福島
会津本郷焼は、福島県の白鳳山(はくほうざん)で採れる土を使用し、江戸時代から作られている陶磁器です。特に、郷土料理に使われるニシン鉢は、民藝運動の中心人物である柳宗悦(やなぎむねよし)によって絶賛されました。
関東地方
笠間燒(かさまやき)
茨城
笠間焼は、茨城県で作られる陶磁器です。安永年間(あんえいねんかん)に信楽の陶工(しがらきのとうこう)の指導によって窯を築いたとされ、鉢や土瓶を製造しました。粒子が細かく、粘性の高い粘土で作られる丈夫な仕上がりが特徴です。現在では自由な作風の陶芸家が多く活躍しています。
益子燒(ましこやき)
栃木
益子燒は、栃木県で作られる陶磁器で、「益子七釉(ましこしちゆう)」と呼ばれる釉薬の厚手で丈夫な器が特徴です。民藝運動提唱者の一人である濱田庄司(はまだしょうじ)が益子に定住し、民芸陶(みんげいとう)を始めたことで全国的に知られるようになりました。
中部地方
九谷燒(くたにやき)
石川
九谷焼は、石川県で生まれた色絵磁器です。紫、黄、緑、青の鮮やかな色彩で余白を残さず描く青手、赤を加えた九谷五彩(くたにごさい)、赤絵(あかえ)、金襴手(きんらんで)など、絢爛豪華な色絵が特徴です。
越前燒(えちぜんやき)
福井
越前焼は、福井県で作られる陶磁器で、鉄分が多く耐火度が高い土を使用しています。この土は釉薬を掛けない焼締め(やきしめ)に適しており、赤褐色の肌に黄色がかった自然釉のコントラストが特徴です。
越前焼は日本六古窯(ろっこよう)の一つに数えられます。
美濃燒(みのやき)
岐阜
美濃燒は、岐阜県で生まれた陶磁器です。桃山時代に茶文化に傾倒した織田信長や豊臣秀吉の庇護により、織部(おりべ)、志野(しの)、黄瀬戸(きぜと)、瀬戸黒(せとぐろ)という茶陶で栄えました。
現在、美濃は日用の器の一大産地となっています。
瀬戸染付燒(せとそめつけやき)
愛知
瀬戸染付燒は、愛知県瀬戸市で作られる陶磁器です。平安時代に日本で初めて高火度の施釉陶器(せゆうとうき)が焼かれ、19世紀初めには磁器の焼成に成功しました。藍色で花鳥を絵画的に描く染付焼が特徴です。
赤津燒(あかづやき)
愛知
赤津燒は、愛知県で栄えた尾張藩窯(おわりはんよう)の高級陶器です。御深井(おふけい)や古瀬戸(こせと)を含む赤津七釉(あかつしちゆう)の伝統があります。後に石皿(いしざら)や馬の目皿(うまのめざら)、柳茶碗(やなぎちゃわん)など瀬戸地方特有の雑器で発展しました。
常滑燒(とこなめやき)
愛知
常滑焼は、愛知県常滑市で作られる陶磁器です。鉄分豊富でなめらかな土を使用し、平安末期から室町時代にかけて甕(かめ)や壺(つぼ)を生産しました。特に朱泥焼(しゅでいやき)の急須は、お茶の味を良くすることで有名です。
近畿地方
四日市萬古焼(よっかいちばんこやき)
三重
四日市萬古焼は、三重県で作られる陶磁器です。その歴史は江戸中期の豪商・沼波弄山(ぬなみろうざん)が「萬古不易(ばんこふえき)」と押印した異国趣味の陶器に由来します。この地域では耐熱性のある粘土が産出され、土鍋や紫泥(しでい)の急須で有名です。
伊賀燒(いがやき)
三重
伊賀燒は、三重県で作られる陶磁器で、その荒々しい土の表情と、表面を覆う緑のビードロ釉の流れや溜まりが特徴です。桃山時代から江戸時代にかけては茶陶として有名になり、現在は土鍋が人気を博しています。
出石燒(いずしやき)
兵庫
出石燒は、兵庫県で作られる磁器で、その白さは「雪よりも白い」と評されるほどです。薄手の磁器であり、緻密なレリーフや透かし彫りが美しいのが特徴です。寛政元年(かんせいがんねん)(1789年)に陶石が発見され、藩主仙石公(せんごくこう)の御庭焼(おにわやき)として開窯されました。
丹波立杭燒(たんばたちくいやき)
兵庫
丹波立杭燒は、兵庫県で作られる陶磁器です。平安時代末期に常滑焼(とこなめやき)の影響を受けて開窯された日本六古窯(ろっこよう)の一つです。その後、登り窯が導入され、赤土部釉(あかどべゆう)や白化粧による墨流しなど、特有の技法が生まれました。
信楽焼(しがらきやき)
滋賀
信楽焼は、滋賀県で作られる陶磁器で、土の成分である長石の表情豊かな焼物です。奈良時代に始まり、室町時代には茶道具、明治時代には火鉢、戦後はたぬきの置物として生産されてきました。
京・清水焼(きょう・きよみずやき)
京都
京・清水焼は、京都で作られる陶磁器で、楽焼(らくやき)以外の焼物を指します。江戸初期に陶工・野々村仁清(ののむらにんせい)が作り始め、その弟子である尾形乾山(おがたけんざん)が発展させました。華やかな絵付けが特徴です。
中国地方
石見燒(いわみやき)
島根
石見燒は、島根県で作られる陶磁器です。頑丈で耐酸、耐塩、耐水性に優れ、水道が普及していなかった時代には「はんどう」と呼ばれる大きな水甕や漬物壺を製作していました。現在も日用食器が生産されています。
備前燒(びぜんやき)
岡山
備前燒は、日本を代表する焼締め陶器で、岡山県で作られます。器に巻いた藁と土の化学変化で起こる火襷(ひだすき)など、製造工程で意図的にうながす窯変が特徴です。
日本六古窯(ろっこよう)の一つに数えられます。
萩燒(はぎやき)
山口
萩燒は、山口県で生まれた陶磁器です。井戸茶碗(いどちゃわん)や粉引茶碗(こひきちゃわん)は「一楽、二萩、三唐津(いちらく、にはぎ、さんからつ)」といわれ、珍重されています。現代陶芸家である濱中史朗(はまなかしろう)の〈大屋窯〉も有名です。
四国地方
大谷燒(おおたにやき)
徳島
大谷燒は、徳島県で作られる陶磁器で、土味の深い暗褐色の巨大な甕(かめ)など、大物作りで日本一とされています。一人が床に横になり足でろくろを回転させ、もう一人が土を成形する「寝ろくろ」という珍しい技法が使われています。
砥部燒(とべやき)
愛媛
砥部燒は、愛媛県で江戸時代から続く染付磁器(そめつけじき)です。戦後、民藝運動の柳宗悦(やなぎむねよし)らが図案の重要性を説き、伝統の文様をデザイン化して手書きする現在の砥部焼が生まれました。
九州地方
小石原燒(こいしわらやき)
福岡
小石原燒は、福岡県で作られる陶磁器です。300年以上の歴史を持つ伝統技法を守り続けており、飛びかんな、櫛目(くしめ)、刷毛目(はけめ)、流し掛け、打ち掛けなど、多彩な技法が特徴です。大分県の小鹿田焼(おんたやき)は、小石原焼から派生しました。
上野燒(あがのやき)
福岡
上野燒は、福岡県で作られる陶磁器です。小倉藩主・細川忠興(ほそかわただおき)が李朝(りちょう)から陶工を招いて窯を築かせたのが始まりと言われています。茶人・小堀遠州(こぼりえんしゅう)が「遠州七窯(えんしゅうなながま)」として特に贔屓したことで有名で、鮮やかな緑青釉(ろくしょうゆう)が魅力的です。
唐津燒(からつやき)
佐賀
唐津燒は、佐賀県で作られている陶磁器です。明治以降、中里無庵(なかざとむあん)(人間国宝)が古唐津(こからつ)を復興させました。蹴ろくろと叩き作りの技法を用いて、土味と野趣に富んだ加飾が味わい深いのが特徴です。
伊万里・有田焼(いまり・ありたやき)
佐賀
有田焼は、佐賀県有田町で日本初の白磁の焼成に成功した陶磁器です。伊万里はその磁器が出荷された港名です。染付、色絵、乳白色の地に絵付けを施す柿右衛門様式(かきえもんようしき)などが特徴です。
波佐見燒(はさみやき)
長崎
波佐見焼は、長崎県で400年以上の歴史を持つ陶磁器です。くらわんか碗と呼ばれる庶民の食器など、量産のための手工業が発展しました。現在でも多くの工房が食器の製作に携わっています。
三川内焼(みかわちやき)
長崎
三川内焼は、長崎県で作られている陶磁器で、平戸藩(ひらどはん)の御用窯として開かれました。手書き唐子(からこ)の染付、透かし彫り、菊花飾細工(きっかかざりさいく)など技巧を凝らした献上品を生産しています。天草陶石(あまくさとうせき)の白を生かした精巧な磁器が特徴です。
天草陶磁器(あまくさとうじき)
熊本
天草陶磁器は、熊本県で作られる陶磁器です。17世紀に天草(あまくさ)で陶石が発見されたことにより始まります。青色のナマコ釉や黒釉の陶器と、純度の高い天草陶石による濁りのない特徴があります。
小代燒(しょうだいやき)
熊本
小代燒は、熊本県で作られる陶磁器です。肥後の御用窯として茶陶を焼いた後、藁灰、木灰、長石を流し掛けする技法が発達しました。井上尚之による〈ふもと窯〉など複数の窯元があります。
薩摩燒(さつまやき)
鹿児島
薩摩燒は、鹿児島県で作られる陶磁器です。文禄・慶長の役(ぶんろく・けいちょうのえき)の後、朝鮮陶工により窯が生まれたのが始まりです。白土に色絵を施した白薩摩と、黒釉の黒薩摩があり、特に白薩摩は明治期に海外で高く評価されました。
壺屋燒(つぼややき)
沖縄
壺屋燒は、沖縄県で作られる陶磁器で、焼締めや泥釉で素朴な荒焼(あらやき)と絵付けや加飾のある上焼(じょうやき)です。17世紀に薩摩から陶工を招き開窯されました。工房は那覇市壺屋や読谷村(よみたんそん)に集中して存在します。
日本の技と美を世界へ、広がる陶磁器の魅力
日本の陶磁器は、その豊かな伝統と職人技によって世界に類を見ない多様性と美しさを誇ります。各地で生まれた陶磁器は、それぞれの地域の歴史と風土を映し出し、その魅力が世の中に広がっています。この記事で紹介した陶磁器の産地、歴史、特徴、その魅力を通じて、日本の職人技の素晴らしさを感じていただけたなら幸いです。これらの陶磁器が、皆様の食卓や店舗で料理を一層引き立て、特別な時間を演出する一助となることを願っています。日本の伝統工芸品に触れることで、新たな発見や感動が生まれることを期待しています。
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