器好きが選ぶ、特別な器たち⑥

ある女性が沖縄に通い始めたのは約13年前。彼女は東京から訪れるたびに、沖縄の食材の豊かさに魅了されていきました。「沖縄の島野菜は独特で、素材の味が非常に濃いんです。それをそのまま生かして料理すれば、自然と美味しくなります」と彼女は言います。彼女が感動したのは、島野菜だけでなく、フルーツやハーブ類も豊富で手頃な価格で手に入ることです。近所の道端で摘んだナスタチウムを使って料理することもあるそうです。市場の人や生産者が食材の使い方を親切に教えてくれるのも、沖縄の魅力の一つです。さらに、地元の器に盛り付けることで、食材の美しさが一層引き立ちます。例えば、ゴーヤーチャンプルーや海ぶどうなど、沖縄の伝統的な料理が地元の器に盛り付けられることで、その魅力が最大限に引き出されます。

彼女は器を集めるのが昔から大好きで、旅先や陶器市で買い求めることが多かった。しかし、沖縄に住むようになってからは、各地の工房を訪ねて作家と直接会話しながら器を選ぶようになりました。「沖縄は作家さんと直接会えるのがいいですね。どういう使い方が良いか、手入れの仕方などを聞けるし、作り手の思いが伝わるので、大切に使おうと思うんです」と彼女は言います。最近は、沖縄の鮮やかな食材が映えるシンプルな造形や文様の器に心惹かれることが多いそうです。色合いや表情に作家の人柄が滲み出ている器は、食事の時間をより特別なものにしてくれます。例えば、沖縄の青い海や空を思わせる鮮やかな青色の器は、食卓に爽やかな印象をもたらします。沖縄の伝統と現代のデザインが融合した器は、日常の食事を特別な時間に変えてくれるでしょう。

型にはまらない器使いが料理の幅を広げてくれるとある女性はいいます。彼女は幼少期、家族の影響で焼物の器に囲まれて育ちました。10代から20代にかけて洋食器に憧れ、特にパリでの生活中には〈アスティエ・ド・ヴィラット〉の白い世界に魅了されました。数年前に訪れた焼物の窯元がきっかけで、日本人作家の器に興味を持つようになり、現在は国内外の次世代作家の自由なスタイルに惹かれています。「次世代作家の作品は、フォルムも釉薬も焼き方も斬新で、どんな料理をのせようかと考えるのが楽しいんです」と彼女はいいます。最近では、和洋折衷の料理を器に盛り付けることが多く、特に洋風のパスタやデザートを日本の器で楽しむことで、新たな美しさと発見があると言います。

日常的にお茶の時間を楽しむ彼女は、自由な中国茶スタイルにも惹かれています。お茶の時間をより豊かにするために、彼女は様々な作家の器を取り入れています。例えば、安藤雅信や小野哲平、味賀章夫などの作品を使い、中国の作家の急須や新進の注器、石のようなプレートなどもコレクションに加えています。「作家の思いが伝わる器を使うと、料理の楽しさが増します」と彼女は言います。これらの器は、料理のクリエイティビティを刺激し、食卓をより特別なものにしてくれます。彼女は料理のプロではありませんが、器から料理を考えることが多いそうです。「どんな料理をのせようかと頭をひねるのが楽しいんです。器に教えてもらうことがたくさんあります。既成概念にとらわれず、自由に取り入れることができるスタイルは自分らしさを保つことにもつながります」と彼女は言います。特に、季節ごとの料理に合わせて器を選ぶことで、その季節感を表現することができます。例えば、春には桜の模様の器、秋には紅葉を思わせる色合いの器を使うことで、四季折々の美しさを楽しむことができます。こうした自由な発想で器を使うことで、彼女の食卓は常に新鮮な驚きと喜びに満ちています。

器は料理を引き立て、日常の食卓に彩りを添える重要な存在です。沖縄の豊かな食材に映える器や、現代作家の独創的なデザインの器、そして料理がより楽しくなる青い器、それぞれの器が持つ魅力と物語を通じて、私たちの生活がいかに豊かになるかをお伝えしました。器とともにある生活が、皆様にとって特別な瞬間をもたらすことを願っています。