器を楽しむ人たち ①：フレンチと和の融合、白のオーバル、ヨーロッパの柄物

シンプルで美しい日本の作家の器を使い、自宅で楽しむフランス料理の魅力を語るある料理人。彼の料理スタイルが変わったのは2013年頃。「フレンチ料理はソースを中心に、白い皿をキャンバスに見立てて盛り付けるのが基本でしたが、自然や畑の雰囲気を取り入れる流れが生まれ、器の選び方も変化していきました」と彼は話します。日本の作家の器に対する関心が高まり、ついには料理と器のギャラリーをオープンするまでになりました。

彼は最近、日本の作家が手掛ける薪焼きの器に魅了されています。その器は力強さと釉薬の独特な表情が特徴で、選ぶ楽しみがあります。また、手仕事の美しさが際立つ平鍋や、キャニスターなどもお気に入りです。「これらの器は、料理をさらに美味しく感じさせてくれる道具だと思います」と彼は言います。業務用や工業製品も使用していますが、特に日本の作家の手仕事による器には、特別な魅力を感じます。「食材が届くと、その背景にある生産者の思いや自然の風景を想像します。同じように、器を手にすると作家の思いや素材の背景を感じ、料理と器が一体となる喜びを感じます」と彼は語ります。

ある料理家の自宅の食器棚は、その90%が白い食器で統一されています。大鉢や汁椀など一部の例外を除いて、大皿から小皿、カップに至るまで白で整然と揃えられ、特に多く集めているのがオーバル形の皿です。「仕事でも和食っぽい料理を作ることが多く、プライベートでも家族のためによくご飯に合う料理を作りますが、土っぽい陶器に盛ると和風に偏りすぎる気がして、白のオーバル皿に盛ることで洗練されて見えるのが気に入っています」と彼女は言います。夫が好きな麻婆豆腐も、白のオーバル皿に盛ると軽やかな印象になりますし、自分のために作る洋風のつまみも洒落たワインバーのような雰囲気にしてくれます。どんな料理でもしっくりと馴染むのが、白のオーバル皿の魅力です。

「丸い器は全角度から均一に見えるように盛り付けるのが難しく、数種類の料理を盛り合わせると間が抜けがちですが、楕円形だと正面を決めやすく、縦長に置いて盛り付けると、2～3種類のお惣菜を適当に盛り合わせても絵になります」と彼女は言います。彼女が多く持っているのは、長径が25～30cmのもので、3人家族の盛り皿としても、銘々皿や取り分け皿としても使える便利なサイズです。「持っている器はなるべく満遍なく使おうと意識していますが、気づくとテーブル上がオーバルだらけになっていることもあります（笑）。それだけ頼りになる形なんですよね」と彼女は続けます。

西洋と東洋の文化が交錯する神戸で育ったある男性。その街の雰囲気は彼の好みに大きな影響を与え、彼の食器棚には和食器はなく、ヨーロッパの古い柄物食器が並びます。「子どももいるので楽しい感じにしたいと思い、柄物を選びました。他ではなかなか見かけないものが多いと思います」と彼は言います。その理由は、専門店ではなく、個人から譲り受けているからだそうです。「北欧やフランス、ニューヨークなどに仕事や旅行で行った際、人づてにこういう食器を持っている人を紹介してもらい、使われなくなった食器を譲ってもらいます。ブランドがわからないものも多いですが、ナイフやフォークの跡が残り、前の持ち主が楽しんで使っていたのがわかるものが好きです」と彼は話します。

多くは1960〜70年代の北欧などヨーロッパのもので、その時代の土や釉薬の感じが気に入っていると言います。「新品だと絵柄が鮮明すぎることがありますが、少し柄が取れかけている方が料理の邪魔をせず、柔らかい雰囲気を醸し出します。また、ハードユースするので大量生産された磁器を使うことが多く、皿の存在感が大きいと料理する人も使う人も緊張しがちですが、気兼ねなく使えてデザインが良いものがキーワードです」と彼は説明します。また、カラフルな柄の食器にどんな料理を乗せるか迷うことがあるかもしれませんが、「なんでも大丈夫です」と心強く言います。彼のアドバイスとしては、柄が全面にあるものではなく、リムにだけ柄があるものから慣れると良いとのことです。飾り皿としても気にせず菓子や果物を載せて楽しむことができ、実用とアート性を兼ね備えた柄物食器は、食卓に幸福感と華やぎを与えてくれます。

今回の記事では、フレンチ料理と日本の作家の器の調和、日常料理が洗練される白のオーバル皿、そしてヨーロッパのヴィンテージ柄食器の魅力について紹介しました。それぞれの器がもつ特性や魅力が、料理を引き立て、日常の食卓に特別な瞬間をもたらします。器好きたちの選び抜かれた一品一品が、食事を楽しむだけでなく、その背後にあるストーリーや作り手の思いを感じさせるものです。この記事が、あなたの食卓に特別な器を取り入れるヒントになれば幸いです。